三樹夫

X-MEN:ファースト・ジェネレーションの三樹夫のレビュー・感想・評価

4.4
キューバ危機の裏にはミュータントありの、ナチスの残党の悪ベーコンが第三次大戦を引き起こそうと画策。それを阻止しようとプロフェッサーXを中心に初代X-メンが結成されるという話。この映画の主役は誰かというとマグニートーで、マグニートー誕生までの映画だ。ミュータント優生思想に対してミュータント穏健派と過激派が組んで戦うみたいな構図になっている。

『X-メン』シリーズは様々なミュータントが出てくる能力ものとしての楽しみがある。今作でも色々なミュータントが出てくるが悪ベーコンの能力強すぎ。それぞれ固有の能力に明らかに力の差がある。あまりにも強すぎて『ジョジョの奇妙な冒険 』とか『HUNTER×HUNTER』的な相性をついてのハメ技やコンボ技で倒すしかないが、この映画は基本的には火力重視のバトルとなっている。基本的に攻撃型の能力ばっかりの中、プロフェッサーXって珍しくサポート専用みたいな能力。後はミスティークがサポート専用というか諜報向きみたいな能力だが、他はみんな攻撃型の能力で、テレパシーやトンボ能力ですら攻撃に使える能力を持っている。敵側にテレポート能力者いるけど、サポート専用かと思わせとして能力を活かした攻撃の仕方してくるなど、能力ものとしてのバトル工夫が観ていて楽しい。
そして『X-メン』シリーズのミュータントは何を表しているかというと、被差別者やマイノリティーを表している。マグニートーは強制収容所に入れられ母親を殺されてナチス狩りをしているユダヤ人で、またX-メンメンバーが施設でヘイトを受けるシーンなど、この映画はミュータントは被差別者やマイノリティーを表しているというのが分かりやすい。ミュータントの存在を疑うCIAのおっさんにミスティークが自分の姿を見せるのはカミングアウトの暗喩だ。この時のミスティークの心情を考えると涙を禁じ得ない。この映画は本当にミスティークが切なくて。

プロフェッサーXとマグニートーはこの後もずっと下の名前で呼び合うのが悲しい。ただ命令に従っただけの人に「酷い目に合わされた」と言うマグニートーだが、凡庸な悪は過去の出来事でなく一歩間違えればどこにでも現れる。
三樹夫

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