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サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUSのHicKのレビュー・感想・評価

サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS(2000年製作の映画)
3.8
《妄想しがいのある作品》

【サトラレ】
周りの人に自分の考えが伝わってしまうサトラレ。他の人間と共存するためサトラレ保護法があり、冒頭からその法律の内容を現実味ある設定で説明してくれる。「本人自身にサトラレだと気づかせてはいけない」ということまで法案に含まれていて、もし実際に自分がサトラレで周りが演技をしていたらと思うとちょっとゾッとする。

「正直者はバカを見る」的なサトラレもかわいそうだし、支援制度で得をしつつもサトラレを厄介者扱いする周囲の人々も妙にリアル。

【その他】
・中盤の無人島での症例一号のシーンは、本能と理性が二重人格のように葛藤。サトラレに限らず「人」を表現したシーンだった。

・八千草様。最高のおばあちゃん。彼女がこぼしたうどんを自分で拭いてる時に、サトラレが「あれ、おばあちゃんちょっと小さくなったかな」というシーンがお気に入り。おばあちゃんの背中しか映らないが、思念を無視しつつもちゃんと受け取っていると分かる絶妙な演技だった。八千草様が出てると涙腺が緩む。

【ただ】
本広監督の趣向が悪い方に出ている気も。サトラレの症例が7件なのにサトラレ関連の広告が大げさすぎたり、サトラレが外出するシーンでの周囲の動きが大掛かりだったり、温かいドラマ性に反してダイナミックな演出がちょいちょいあるのが気になった。

【総括】
妄想しがいがある作品。SFっぽさのある設定だが、おばあちゃんとの絆だったり、人間を丸裸にして本質を考えてみたくなるような身近さも感じた。シリアスになりすぎず、コメディを含みながらテンポよく進んでいくので見やすい作品だと思う。
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