emi

デンジャラス・ビューティーのemiのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

男勝りな女性FBI捜査官のグレイシーは、捜査の最中、命令に背いて行動した為に同僚に負傷者を出してしまう。

そんな時、FBIが追っている爆弾魔「シチズン」から爆破予告が送られてくる。

命令に背いたことが仇となり、当初は捜査チームからも外されてしまうグレイシーだったが、標的となったのは「ミス・アメリカ」コンテスト。グレイシーは他に手頃な人材がいないからと言わんばかりの同僚に囮捜査官として選ばれ、渋々"ミス・ニュージャージー"となりミスコンに参加するのだった。


鑑賞のきっかけはハリウッド脚本術の本『Save the Catの法則』で、ストーリーラインが誉められていた為だった。

ハリウッドのお手本のようなストーリーとは一体どんなものなのか一度観てみたい、という気持ちからだったのだけど…思った以上に振り切れた作品で、とても面白かった。数あるメタモルフォーゼものの中でも随一の良さ。

捜査官グレイシーは驚くほど粗雑。男勝りなだけでなく徹底的に品がなく、冴えない女性として描かれている。
食事の仕方は汚いし、服にケチャップが飛ぼうと気にしない。笑う時は豚だし。冴えない役柄にしても、そこまでやるかというくらい。

でも同時に、冒頭で正義感があり情に厚いという美点も命令に背くエピソードで上手く描かれていて、一気に好感が持てたりもする。同僚がいう「本当の君を知れば、みんな君を好きになる」という言葉に説得力が生まれるエピソード。
実際飾らない彼女のキャラクターは、あらゆる場面で周囲を味方につけていく。


オネエ言葉の美容コンサルタント、ビクターもとても良いキャラクターだった。あのマイケル・ケインが演じていたのは意外だったけど、新鮮でもあって。

グレイシーが美しいミス・ニュージャージーに生まれ変わる為に呼ばれたのが、このビクターなのだけど、ここでも「法則」は活きている。当初は仲が悪いのに徐々に打ち解け、反発して喧嘩別れしても、最後には仲直りして更に絆を深めたり。
グレイシーと同僚のバディ&ロマンスもひとつのドラマだけど、グレイシー&ビクターという、ちょっとした友情バディものも楽しめてしまうとは、一粒で2度美味しい。

ビクターと美容チームによってグレイシーは大変身。目を見張るほど美しくなるのに、めちゃめちゃ豪快にコケる。特技で護身術披露しちゃったり。

サンドラ・ブロック凄いな。演技なのかマジなのか分からない程、豪快にいくのが、大変身!なんだけど、変身しきれてない部分も見え隠れしちゃう。コンテスト中もしょっちゅう変顔してるしなぁ…。

全体的にとにかくテンポがよくて、あれよあれよという間にミスコンも捜査も進んでいく。中弛みしない。

グレイシーは当初コンテスト自体をバカにしまくっていて、出場者も頭空っぽと言わんばかりに、モノマネしたりしてるけど。他の出場者のプレッシャーを知り、話をする中で打ち解けて、友情も芽生えたりして。遅れてきたグレイシーにみんながメイク手伝ってあげるシーンとても良かった。

ラストシーンはもう阿鼻叫喚。オシャレに解決!って、してしまわない所が、この作品の良さだなと思った。

傍目には2位になったミス・ニュージャージーが嫉妬してティアラ奪おうとしてるようにしか見えないので、周りは必死で止めようとするんだけど、そのティアラには爆弾がー!!と、グレイシーも必死。

他のミスの顔面をブン殴りつつ事件解決っていう。ドタバタ感が尋常じゃない。コメディも含めつつ、人間ドラマも美しく描かれていて…なるほど〜と唸ってしまった。

サンドラの出演作は何本か観ていたけど、この役が一番突き抜けてて好き。

2001年の作品だからジェンダー感的には少し露骨で古さを感じるけど、そんな中でもグレイシーは嫌味がなくて、ある意味先進的だった。
2も制作されているようなので、そちらも観てみたい。
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