『美しき諍い女』(La Belle Noiseuse)1991 フランス
「わたしの身体は活動的になった。もちろん完全に拒否する瞬間もあった。自分が物になった様に感じたから。
私は『女体』というイメージから逃がれようとした。特にモデルというもののイメージを変えたいと思った。
この絵はペアで描かれるべきだと思った。画家とこの女性の間には二つの眼差しが衝突している。彼女は彼を見て彼を挑発する。そして彼女は彼を捕まえて離さない」(エマニュエル・べアール)IMDB
この主演女優のコメントに尽きる。
原題La Belle Noiseuse(美しい諍い女)は英語だとThe beautifll provocateuer(美しい挑発する女)が相応しいらしい。(IMDB)
インスピレーションを失った老いた画家と元モデルの妻。芸術愛好家に連れられて、老画家を尊敬する若者が魅力的な恋人と訪れる。若者は恋人をモデルとして差し出す。
オノレ・ド・バルザックの原作『知られざる傑作』と共通しているのは設定と登場人物のみ。
原作では老画家が女性をモデルに絵を描く場面はない。
映画は老画家が女性を描く場面が大部分。(エマニュエル・べアールは映画の70%で衣服を身につけていない)
プロの画家の手が何枚も何枚も絵を描く。画家はポーズを何回も何回も変えて描く。
画家がモデルに指示をしてモデルがそれに従う。その様に始まった2人の関係は逆転していく。
完成した絵は原作の題名の様に「知られざる傑作」になりモデルとして奪われ続けていた女性は「美しき挑発者」になってアトリエを立ち去る。
芸術が産まれる瞬間、産まれない瞬間が描かれる。観客は画家のアトリエに透明人間になったかの様に立ち会い続ける。息が詰まる様な時間。
しかし4時間半は長い。