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友だちのうちはどこ?のtaのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.5
冒頭、教室のシーンで、カメラは子供と同じ目線に置かれる。学校を出たあと、あるいは家での移動のシークエンスで、子供の動きは安定して捉えられる。子供の目線で物語を伝えてくれるカメラ、という安心感はしかし、すぐに裏切られる。
洗濯物が目の前の光景を遮り、容易く不可視の領域を作り出す。ジグザグ道は俯瞰的に捉えられるし、急ぐ少年をカメラは常に先回りして待ち構えている。対象との距離を隠そうともしないその姿勢は、少年の気持ちに寄り添いたいという願望から軽やかに逃れていく。
さらに、少年が家に戻るという印象に残るはずのシーンは二度とも描かれない。一度目は爺さん連中の長話、二度目は老人が家に帰ってからのくたびれた様子へと突然、しかし当たり前のように移ってしまい、少年は映画から追放されてしまう。視点が不意にぐらつき、複数化される。観客を突き放す瞬間がこの映画にはある。それが当たり前のようになされるところがこの映画の怖いところだと思う。
さ迷い続ける少年とは対照的に、時間だけが一直線に進み続け、無慈悲に日が暮れる。それは映画的時間の暴力であると同時に、映画が必然的に物語を生んでいくという事実を指し示してもいる。
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