ぺん

友だちのうちはどこ?のぺんのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.4
キアロスタミ監督第一作目。
10年以上前に観たときは子どもを無視する理不尽なジジイとババアばかりでイライラ、憤慨していた気がする。
作中で子どもは大人の言うことを聞くこと、躾と称してぶん殴られることが正しいとされる。
当時の厳格なイラン社会を、右往左往する主人公の少年を通してどこか冷めた目線で描いている作品。

今回見直してまたイラッとはしたものの、一歩引いてみれば大人たちも大人たちで自分の親から同じように躾けられ、子どもへそういった接し方しか知らないように思える。
大人は、子どもたちを虐めたい訳ではないんだろうけどね、これが子どもたちのためになると信じている。
自分も最近耳にするヤングケアラー問題など見るにつけ他人事ではなかったので、これが当時の中東特有の風潮だとも思えない。
とは言っても、今の日本よりも厳格な社会ではあったんだろうな…

職人のおじいさんと巡る夜の街、ステンドグラスを透かす光が繊細で美しい。
先の見えない暗闇はアハマッドくんの不安を思わせる。
おじいさんもまぁ道すがら話が長いんだけど、甥っ子を思い出して嬉しかったし寂しかったのだろうね。
時代に合わせて変わったほうが良いもの、変わらないで欲しいもの、闇の中にいろんなものが混じり合っている。

さて、母親は父親の前では優しいのかな?なんて穿った見方もしてしまった。家事が落ち着いて余裕ができたのもあるのかな。
決してアハマッドを蔑ろにしているわけじゃないのが伝わってきて、安心させられる場面もある。
ラスト。子どもなりに考えた最良のやり方に、花の栞にホッとする🔖
今作が作られて30年あまり、彼らを取り巻く社会はどう変わっているのかな。
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