まぬままおま

老人Zのまぬままおまのレビュー・感想・評価

老人Z(1991年製作の映画)
3.5
やっぱりメカのデザインはいいな。音のつけ方も面白い。
人間社会を逸脱し人智を超えた禍々しいものとしてコンピューターが想像されていたのがよく分かる。人がつくりだしたものにも関わらず。実際そうなってもいると思うけど。

老人の高沢と亡き妻ハルのメカを介した再会はシュールで笑える。ハルの声はコンピューターが合成した声に過ぎないし、メカは人の形を脱した禍々しい何かである。それなのに実際に再会できたと思うのは滑稽である。
けれどこれは私たちが物語世界の人々と映画で出会うことと似た構造であることにも気づかされる。
物語世界の人々は合成だし、彼らは生身を脱した意味ある記号に過ぎない。物語世界で起こった出来事を実際に在ったと認識し、笑う私たち。
私も老人のようで笑えない。

蛇足
メカ的な側面は肯定的に捉えられるが、春子の人物造形は最悪である。
老人に執着する理由が分からないし、感情的に行動する描き方はジェンダーバイアスを感じる。
またメカに対置する官能的な足の描き方もなんかなー。けど単なる絵に過ぎないものを官能的と評価する私の目は何なんだろう。