Itotty

東京公園のItottyのネタバレレビュー・内容・結末

東京公園(2011年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

東京の公園とともに動き出す、とある東京のワカモノの迷いと恋と。


東京とだけ聞くと、わちゃわちゃしてて、あんまり好きじゃないイメージ。
でも一歩公園に繰り出してみると、落ち着いた安らぎがあって、そこにいる人みんながいい人に見えてしまうような気分。
この映画も、そんな心地よい空気がずっと流れていました。


三浦春馬も、榮倉奈々も、小西真奈美も、
どこか表面的で本音を話さない人間らしさをまとっているのですが、
ほんの少しのきっかけで気持ちを前に出していく変化がよかったです。



特にこの映画では好きなシーンがありました。三浦春馬が、義姉の小西真奈美に向き合おうと彼女と2人きりで過ごすシーンがとびきりよかった。
ファインダー越しに小西真奈美を見続ける三浦春馬は、彼女をまっすぐ見ようと決意したがゆえにカメラを外さなかったのでしょうか。
最後にゆっくりとカメラを外して見つめ合う2人。
これ以上近づいてもいいのだろうか?という迷いの詰まった時間。
ゆっくりと時間をかけながらも、この瞬間を逃すまいと視線を外しません、
そしてとうとう近づいていく2人。
こんなに胸が高まったキスは、もしかしたら初めてかもしれません。
それくらい、静かに、ゆっくりと、それでいて情熱的でした。
この2人のシーンに全て持っていかれました。
一歩踏み出した2人の関係は、それ以上行くことはなかったけれど、逆にそれがいい余韻を残したのかもしれません。



さて、この映画では、あくまで三浦春馬が中心ながら、彼を取り巻く人たちがたくさん出てきて、それぞれかいつまんで様子を描いていきます。
だから、あまりにも説明が少なすぎたり、逆に比喩的な表現が多かったり、理解が難しいところもありました。
詩が登場するわけでも、演者が詩的に表現するわけでもないけれど、物語全体が気づいたら詩のような、ぼんやりと淡いお話。


東京という身近な存在を舞台にして、大学生の等身大の悩みというよくありそうなテーマを扱っている。
だけれども、そんな近しいテーマは、実は一番ビビッドに描くことは難しくて、しっかりと形作るのは難しいのかなって思いました。
日常の変化は、少しのきっかけで、少しずつ動いていくけれど、そんな日々を積み重ねて生きていく、東京の人々の姿も悪くないなって、そんな気持ちになれる暖かい映画でした。
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