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エレファントのnemiのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
3.8
鬱憤の溜まった高校生が普段から銃に接していて、簡単に手に入る状況で…となればこうなることも理解できる。高校っていう小さなコミュニティで、ちょっとした田舎で、繰り返される毎日が全てで、そうなると10代って失うものがない(責任をとれない)し、視野もどんどん狭まるし、銃乱射の計画を立てるのもそこまで不思議じゃない。

私が彼らの立場で銃乱射してやろうと思うぐらい鬱憤が溜まっていても、人の痛みを見ると私が痛くなってしまって全然楽しめないから共感/共感覚の力って凄いなと思った。彼らは痛みを感じていたんだろうか。いじめられて、疎外されたときに心から悲しめたんだろうかと考えさせられた。まず心から悲しんで、怒って、痛みを感じる、理解することができたら良かったのにと思った。そしてそれを消化する方法を暴力以外で見つけてくれたら…と思う。程度の差はあれ、人間はみんなそうやって感情と付き合っていると思う。

はなから自殺するつもりだったのが本当に悔しい。なんの責任もとらず、解決もせず、銃乱射して結局なんだったの?って無力感が凄かった。いじめられた報復や気づこうとしなかった教員に対する復讐だって言っていた部分もあったけど、それは後付けの理由で結局はただ人を殺したかっただけのように見える。その場にいたから殺された子たちにとっては災害でしかない。

最初は日常を色んな高校生の視点で、後半からは犯人にフォーカスした物語構成だったけど、犯人はいじめられてたし仕方ない部分もあるとか、可哀想とかいう気持ちは湧かなかった。一緒に観た人と「そうじゃないでしょ…」と言い合いながら終わった。80分って短いと思っていたけど、すごく満足感のある映画だったと思う。

キスシーンの使い方も好きだった。
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