りばいあ

エレファントのりばいあのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
5.0
およそ10年まえ、初めてこの映画を観た時の印象は最悪でしたが、あらためて観て大好きになりました。題材がコロンバイン高校銃乱射事件なので当然好きという表現に後ろめたさを感じますが。

DVD収録のインタビューでガスヴァンサントが語っていることが全てですが、この映画は昨今のこの手の映画に感じる説教じみた意味や意義の押し付けが全くありません。出来事についてや、それぞれのキャラクターの説明はされることなく、1時間20分という、あまりにも短い尺で映画はあっけらかんと終わります。しかし、まさにこのフラットな視点や、膨大な余白がもたらす影響こそが監督が望んだこと(キーフレーズ以外の役者の台詞は全てアドリブ)。その結果、観客は自ずとキャラクターに感情移入し、この出来事の悲惨さや、アメリカの銃を規制しない社会について考えることになります。誰かに何かを伝えようとするとき、身振り手振りで熱っぽく色々語って伝わらないことがあります。しかし、ただ目を見つめて沈黙でいるだけで伝わることがあったり。表現で伝える手法の奥深さをこの映画で強く実感しました。

感想を加速させますが、劇中に名前がフィーチャーされた登場人物、もっと言えばこの学校の中にいる全員、あるいは学校の外にいた誰もが、あの二人に代わってこの事件を起こしてもおかしくない社会の渦中にいるんだと思いました。もちろん銃規制で変わることは多くありますが、根本的な問題はアメリカという国の社会の構造にあるのかもしれませんね。

コロンバイン高校銃乱射事件でお亡くなりになった全ての方々にご冥福をお祈り致します。
りばいあ

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