SotaNomoto

エレファントのSotaNomotoのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
4.5
主役という視点がなく主観が排除されて様々な第三者的視点から見た、いつもとかわらない…と思っていた日常を淡々と描写している。
だからすべてが日常のワンシーンであって、ある人にとっては意味を持っていても、またある人にとってはどうでもいい。会話どうしに繋がりはなく、映画を見る人にとっては尚更脈絡がない。
なんだろう、靄がかって、ノイズがかって、水中に浮遊しているようなつかみ所のないこの感覚。思春期の高校生が感じる閉塞感、先の見通せなさ、抱えている悩み、行き場のない苛立ちが、あえて主張を排除することによって、それが物凄く強烈なメッセージになって伝わってきた。
コロンバイン高校での時間軸からそれぞれの視点での時間を切り取ってパッチワーク的に縫い合わせたような構成。ジョンが劇中描かれた人物と接触して、その背景に別の登場人物を配することによって時間軸を追ううえでのナビゲーター的役割を果たしている。
映画はとある事象を殊更に、センセーショナルに描こうとして非日常性を謳うけれど、すべての事象は各人の日常が緻密に絡まり合って起きうることであって、特別なひとつの出来事ではなく、不特定多数の日常の集積なんだなと思わせるような構成だった。
カメラのシャッターをきるのも、ネットで銃を買うのも、銃の引き金を引くのも、日常に終わりがくるのも紙一重。ボタンひとつで終わってしまう。ものすごく呆気ない。ぼくたちが置かれている日常はこれほどまでに脆くて儚いものなんだと衝撃を受けた作品でした。
ただ、黄色い服の黒人の男の子の行動の真意がよくわからなかった…死への好奇心?呆気ない命の重み?なんだったんだろう…
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