半兵衛

女王蜂の怒りの半兵衛のレビュー・感想・評価

女王蜂の怒り(1958年製作の映画)
2.5
石井輝男監督がいくら真面目な任侠映画が嫌いと解っていても、ヘンテコすぎて途中からついていけなくなった。

主人公の女組長が敵対するやくざから縄張りを守ろうとする物語なのだが、彼女を助けるポジションに当たるはずの宇津井健演じる風来坊が敵側の組織に入りあんまり主人公を助けようとしないので見てるこっちが混乱してしまう。しかも終始飄々とした態度で二つのグループの動きを見守り、その過程で犠牲者が出そうとになると守ったり手を貸したりとひたすらフリーダム。『殺し屋人別帳』の渡瀬恒彦といい『決着』の丹波哲郎といい石井監督がそういうキャラが大好きなんだろうなということは理解したが、それが映画の面白さにつながっていないので困る。

そしてこの映画はメインの女ヤクザは女神的存在で抱かれないというヤクザ映画のタブーを堂々と破っているのも約束事が嫌いな石井監督らしい(さすがにベッドシーンは無く事後の描写のみだけだが)、でもそれも物語の本筋と絡まないので何を見せられているんだという気持ちのみが残る。終いには宇津井健が犯された久保菜穂子に「狂犬に噛まれたと思って諦めろ」とひどい言いぐさで慰める始末。

そしてもっと呆れるのがラストで、金や縄張りをめぐっての駆け引きが色々あったのに悪役の方から堂々と果たし合いで決着しようと言ってくるのだ。今まで悪役が計略を練ったりした意味は何だったのだ!そして本当に堂々と戦うのだが、そこへ更なる展開が巻き起こりエンディングへ。ネタバレは避けるけれど確かにハッピーエンドには違いないが主人公が頑張ってきた意味なくない?と見てるこっちが思っている間に映画は終わる。

それでも石井監督の巧みな編集術やスピーディーなカット割があるので何とか見れたけれど、石井輝男監督特有の真剣に映画を作ろうとしない姿勢がマイナスに出た結果に。

あと天知茂の胡散臭い老け役は色んな意味で必見、その子分に扮する菅原文太の拙い演技もよく後年大スターになれたなと感慨に耽る。三原葉子姉さんのいつもとは違う淑やかなヒロインも印象的。…主役を演じる久保菜穂子のヤクザっぷりも艶があって良かった。

ちなみに何の意味もなくカラーから白黒に変わるラストは一体何だったのか。
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