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ミリオンダラー・ベイビーのERIのネタバレレビュー・内容・結末

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

モ・クシュラ!!まずタイトルにセンスを感じます。アカデミー賞4部門受賞作品にもなって話題になりました。

クリント・イーストウッドはまったく期待を裏切らなくて、監督としても、役者としてもほんまに感嘆の息。そして、ヒラリー・スワンクはやっぱりすごい。ほんまプロって、こういう人を言うんだろうなぁ。かっこいい。見た後ボー然として、所々チクチク痛かった。

あらすじは、フランキーていう初老の名ボクシングトレーナーの所に、「あたしの試合見た?」て声をかけてくる一人の女性がいた。彼女が31歳のマギー。もう生まれながらに、ずっとずっと貧乏で13歳の頃からウェイトレスの仕事をしていて、お金だって全くないのに、稼いだお金は全部ボクシングにかけている程、一途にその才能を信じて、一途にボクシングを本気で楽しんでいる女性。フランキーは、トレーナーとして女性は見ない!の一点張りでマギーを追い返す。

でも、マギーはもちろんなそんなことで諦めたりしない。フランキーの儲からないジムに入って、彼の視界の中で黙々と練習を続ける。本当に夜遅くまで、ひたすら練習をする。自分にはこれしかないと言わんばかりに。 結局徐々にそのひたむきさに心を動かされて、フランキーはマギーのトレーナーになるねん。そこから2人の二人三脚のボクシング人生が始まる。

フランキーは、ずっと会わないでいる娘がいるんやけど。娘の小さい頃の姿しか知らなくて、ずっと手紙を出すけども封を切ることもなく手紙は送り返されてしまう。そんな自分の中にある後悔と、娘に対する思いをマギーに重ねるフランキーと、マギーはマギーで親思いで兄弟思いやのに、決してその思いが報われず、ファイトマネーで稼いだお金で、家族にお家を買ったりしてるのに、家族は情は愚か、お金しか興味がなくなってしまう。そんなマギーは、亡き父の姿をフランキーに重ねていたのかもしれない。そんな2人の血のつながり以上の、親子愛のような絆の物語。

イーストウッドがこだわったであろう、映像の撮り方やったり、彼自身の存在感や、ヒラリースワンクの演技力、一つ一つをとってもかなりレベルが高いです。

映像は、光と影の使い方がすごいです。胸にぐっときます。車のシーンも、ジムのシーンも、そして病院のシーンも影が巧みに使われている。栄光と影じゃないけど、人生そのものな感じもするし、その人の心の中を饒舌に映し出しているようにも思える。一番ぐっときたのが、やっぱり握手をしたシーンかな。ふたりのはじまりの瞬間。

キャストも、実力派揃いで文句ないです。とてもわかりやすいシンプルなストーリーではあるんやけど、扱っている内容が深いから、一度じゃ消化しきれなかった。愛のあり方とか、人の生き方とか、人生にかける想いとか、そういうものが思いっきり込められていて。なんだか一口じゃ飲み干せないようなものやった。だからぼーっとしてしまったのもあるねん。やるせない気持ちもいっぱい漂っているし。

世の中の、特に親と子供と、夢と現実と、命のことを、とても静かに、そして激しく見せてくれる映画。
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