その輝きはとっても寂しい
僕はミッキー・ロークにはあまり思い入れがないんです。
でも、この作品の彼。
そんな事がどうでも良くなるほどに最高でした。
イケメン俳優から一転、ボクシングにプロレス、そして整形に次ぐ整形で顔面崩壊と壮絶な人生を歩んでいる彼。
だからこそ今回の落ち目なプロレスラー役はドンピシャなんです。
心臓病を患い日々の生活もままならない元人気レスラーが疎遠な娘との関係修復を図ろうとするが···
ダーレン・アレノフスキー作品には珍しく、ハチャメチャな展開が一切ありません。
人を淡々とそしてしっかりと描いているんです。
でも、根底にはアレノフスキー・イズムが流れている。
その相性が非常に抜群。
情熱大陸のアンダーグラウンド版を観ているような妙なリアリティーがありました。
この元人気レスラー。
不器用そのものなんです。
彼が涙を流すシーン。
涙が直線的にスッと流れるんです。
その軌跡って彼の直球勝負で不器用な人生そのものなんですよ。
あの涙に彼の全てが詰まっているんです。
僕ね、このシーンを観るために今まで生きてきたんだと思うくらいに素晴らしかった。
あの涙は本物。
でも彼の不器用さは決して変わらない。
だからこそ、あのラストシーン。
胸が張り裂けそうとはこんな時に使うんだ。
人の人生の、儚さや刹那さ、そして不器用さ。
これを敢えて輝いていると表現したい。
でも、その輝きの寂しさといったら、
もう····。
こうも余韻の続く映画。
人生であと何本出会えるかな。