Yoko

レスラーのYokoのレビュー・感想・評価

レスラー(2008年製作の映画)
4.4
80年代に大活躍したプロレスラー”ランディ”。
あれから20年近く経った今なおリングに立ち続ける男に、かつてのライバルとの再戦する話が…。


これはすごい傑作だった。
ミッキー・ローク演じる主人公のプロレス、これは演技というより実技だろう。
リング上の臨場感もさることながら、生傷の痛々しさや楽屋の応急処置の生々しさは見るに堪えかないほどだ。

何より主人公の信念の強さ、それでもやり通す彼の生きざまはとかくカッコいい。
この人はとてもユーモラスで、本来なら割と現実生活で上手くやって行ける力も備わっているはず(総菜売り場で魅せたあの洒落っぷり)だ。
しかし、自分の道を突き進むときには他には目もくれないほど真剣で、だからこそ現実の事柄に不器用になってしまう。

彼をとりまく人々の言葉や表情も絶妙だ。
老いて流行にも乗り遅れている彼を傷つけないように気遣う近所の子供や馴染みのストリッパーの仕草が、第三者の立場で見ている観客にとっては痛ましい努力として目に入ってくる。
これはもう仕方ないことなのだが、彼にとって最も必要なことは、常人のこうした「優しい気遣い」などではなく、同胞たちとの気の置けない会話や戦士に対するまなざしを注ぐファンなのだ。

誰の気遣いの言葉も耳に入らないリング上の彼の姿は、強靭で狂人だ。
境地に達した男の物語は熱い。
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