冒頭の窓の画からすごく不穏だった。窓は曇っていて同じような質感なのに姉妹も父親もそれぞれが海岸、青々とした木、高層ビルと別なものを観てい。海岸はもちろん結末を示唆しているのだけれど、それ以外の視線がまったく一致していない。
このシークエンスだけでも皆が別な思惑を持っているのが明らかなのに、次のシーンでは高級な花瓶を買い込んだ母親が我が子に反発を受けている。視線の不一致がそのまま母性の不在を表していてゾッとした。
終盤の義母に対する思惑もバラバラで、兄弟を全員画面に収めながらも一人だけに焦点が当たっている。被写界深度の浅さがそのまま人間に当てはまるすごい。その際に酒の入った盃を片手に持ったままなのもポイントが高い。
陰影の作り込みやカットタイミング(不穏な話題になるとカットアウトする)やポジションへのこだわっていて、離婚してないのに再婚を切り出す親がベッドに半身を乗り出している様が滑稽だった。
単調なようで緻密な、じわじわと雰囲気で締め付けるような映画。