Jimmy

馬のJimmyのレビュー・感想・評価

(1941年製作の映画)
4.0
この山本嘉次郎作品は、当時、ティーンエイジャーだった高峰秀子が出演しており、春夏秋冬の一年かけて作られた(恐らく当時としては)大作。

助監督として黒澤明が参加していた作品としても有名。(映画でのクレジットは「製作主任」の表記である。)

物語は、馬の競りシーンから始まる。

東北の貧しい家の娘いね(高峰秀子)は、馬の飼育に懸命である。
しかし、母親(竹久千恵子)は「人間様はひもじい思いをしているのに、馬はたくさん食べるんだね」といった厭味を言っている。

しかし、いねは馬育てに必死であり、冬の雪山に馬のエサを取りに行って、家に帰って来るなり倒れ込むシーンがあるが、高峰秀子の本には「このシーンでは、黒澤明が(雪山から帰って来たことを明確にするために)高峰秀子の睫毛にロウソクを垂らして固めて撮影した。でも、そんなの映画観る人には判らないのにね。黒澤さんは、そうしないと気が済まなかったようだ。」と書かれていたが、自分はそのエピソードを知っていて観たが、やっぱり高峰秀子の睫毛は判らなかった(笑)

春になると、馬の出産する場面があるが、ここらへんから母親が協力的になってくる。

馬の出産シーンの構図は、黒澤明が考えたのか、山本嘉次郎が考えたのかは判らないが、見事な構図になっている。

この映画はタイトルどおり「馬」の登場シーンがやたら多いが、馬が映画の筋に沿って動いている=馬も演出されているようで、このあたりが黒澤明の手腕発揮というところだろうか。

とりわけ、列車と並行して乗馬疾走する高峰秀子の場面は凄い。

また、いね(高峰秀子)の父親は、藤原鶏太(後の釜足)であり、「黒澤映画にも多数出演していた藤原釜足と黒澤明の付き合いは、だいぶ以前からあったのだなぁ」と思った。

1941年の映画なので、やや戦時色が強いが、日本映画が誇る佳作といえよう。
Jimmy

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