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巴里の気まぐれ娘のukigumo09のレビュー・感想・評価

巴里の気まぐれ娘(1953年製作の映画)
3.4
1953年のマルク・アレグレ監督作品。彼は10代のころから『狭き門』や『田園交響楽』で有名な作家アンドレ・ジッドの愛人であった。ジッドの『日記』に出てくるMという人物は若き日のマルク・アレグレである。彼は映画監督になる前にジッドに連れられてアフリカへ旅行する。その旅の個人的な記録映画『コンゴの旅(1927)』をきっかけに映画を目指すことになる。1931年に長編劇映画デビューしてから50本以上の作品を手掛けることになる。特に新しいスターの発掘に定評があり、ブリジット・バルドーやジャンヌ・モローを世に出したことで有名な監督だ。本作『巴里の気まぐれ娘』でも『死刑台のエレベーター(1957)』や『突然炎のごとく(1961)』で有名になる前のジャンヌ・モローが出演している。
 
本作は邦題に巴里が入っているが、パリが舞台の映画ではない。それはこの映画の主人公が避暑地の別荘からパリへ帰る列車を降りてしまうからだ。ジュリエッタ(ダニー・ロバン)は母と妹マルティーヌ(ニコール・ベルジェ)の3人で海水浴などを楽しんだ帰りの列車で、同じ客室にいた男性アンドレ(ジャン・マレー)がシガレットケースを置き忘れたまま下車したのに気づく。ジュリエッタはアンドレを追いかけてなんとかシガレットケースを手渡したものの、列車は発車してしまい乗り遅れてしまう。次の列車は翌日まで無く、田舎のホテルは満室なのでアンドレはジュリエッタを自分の屋敷に一晩泊めることにする。
ジュリエッタはかねてから母親に勧められた縁談があり50代の資産家と婚約していた。親子ほど年の離れた相手との縁談に乗り気のしなかったジュリエッタはここで偶然出会った弁護士のアンドレを男性として見始める。そうとは知らぬアンドレは翌日交際相手ロジー(ジャンヌ・モロー)を連れて屋敷に帰ってくる。一晩泊まったらすぐ帰ると思っていたアンドレはまだジュリエッタがいる気配がして大慌てだ。恋人と鉢合わせするとまずいのでジュリエッタを寝室から屋根裏に移動させるが、事情を知らないジュリエッタはぞんざいな扱いにいら立っている。一方ロジーも古くて薄暗い屋敷が好みに合わないようで、ジュリエッタが使った寝室を片付けようとしてシーツが被さったアンドレの姿をお化けと勘違いして腰を抜かす始末だ。
 
この恋愛コメディは一つの屋敷の中で2人の女性をいかに鉢合わせさせないかということ一本で勝負した作品だ。気が強くプライドの高いロジーと、自分が与えられた屋根裏を、勝手に快適空間にリフォームしてしまう天然娘の間で奔走するジャン・マレーが微笑ましい。本作ではジャンヌ・モローが映画において最適な役柄を得る以前の、可愛らしい姿を見ることができるというのも注目ポイントだろう。
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