ペコ

心の指紋のペコのレビュー・感想・評価

心の指紋(1996年製作の映画)
5.0
最高のロードムービー。
医者の男マイケルが、ガン患者の少年ブルーに銃で脅されながらも、ブルーの最期の願いを叶えに行く話。
死が間近であることと、警察に追われながらも目指す場所は“聖なる湖”という水辺であることから、ノッキンオンを連想してしまう。
しかし、信仰を一切否定する偏狭でプライドの高い男マイケルが、ブルーと旅をすることで成長する物語でもある。

※医者の男(マイケル) → 白人、妻子持ち、もうすぐ昇進、科学信仰。
※患者の少年(ブルー) → 混血、家族知人はわずか、もうすぐ死ぬ、インディアンの教えを信じている。

白人、黒人、インディアン、スラム街、医療システムの闇・・・それらに、マイケルが初めて向き合い、次第に本気でブルーの願いを叶えてやろうと奮闘する姿には心震える。

動機づけも上手い。
幼い頃、マイケルは、兄の苦しい闘病生活を目にしていた。
ガンを治すことの出来ない医療の限界。
その兄に、何も与えられず、狭い病院で死なせてしまったことへの後悔。
医者になった今、彼はまた同じことを少年にさせようとしている。
医者は全ての病気を治せるわけではない。
分かってはいるけど、余命幾何の患者を放っておくことも出来ないのが医者。
どうせ死ぬなら延命治療で苦しませるより、外へ連れ出す方がマシ。
こうしてマイケルは過去を克服する。

人生の意味を問わずにはいられない広大なアメリカの原風景。
ラストシーンは本当に忘れられない。
ペコ

ペコ