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シェルブールの雨傘のとりのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
3.9
この作品、3度目にして初めての劇場鑑賞となりました。
初めて観た時も微妙に笑ったけど、やっぱり今回もところどころでニヤニヤしてしまった。
一般的なミュージカル映画とはちょっと違う独特の雰囲気が妙~な空気を醸し出しまくり。
ささいな日常会話にいたるまで全てのセリフを歌で発してるので、くだらないことこの上ないっていう。
でも登場人物たちは真剣そのものなので、こちらもちょっと襟を正して観ようという気持ちになれるんですね。
残念ながら見事な歌いっぷりは全て吹替えらしいので、俳優さんの口パクにやや不自然なところがあり、ちょっと気の毒。
ストーリーはメロドラマの域を出てないけど、この映画の魅力はそこではなく映像の美しさにつきると思う。
主演のドヌーヴの美しさはもちろんのこと、セット、ロケ、背景どこを取っても絵になる素晴らしさ。室内の家具や小物の色使い一つ取っても非常にポップかつセンス良く、この映画がおとぎ話であることを納得させられます。
ドヌーヴ母娘の営む傘屋の内装がまず素晴らしい。当時のフランスの一般的な傘屋さんって実際はどうだったのかは知らないけど、こてこて日本人である私にとっては「フランスなんだからこうでなくっちゃ!」と思ってしまいます。
そしてショーウィンドウの使い方がいいんです。店内でドラマが展開されている最中、窓の外にもちょっとしたドラマを感じさせてくれます。
逆にお店の外を通り過ぎる時の店内の様子も巧みで、窓の向こうにいるドヌーヴが可憐そのもの。
季節感も描かれていて、こういう感覚って日本人としてはとても共感しやすい部分なんですよね。
フランス製作のドラマ作品に面白いものが多いのはそういう理由が含まれてるように思います。情緒があるんですね。
個人的にこの映画に出てくる、男性に頼りっぱなし、男がいないと生きて行けないタイプの女性は大嫌いですが、ドヌーヴだったら許せる・・・。
北千住シネマブルースタジオ
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