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シェルブールの雨傘のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
4.0
台詞がすべて歌で綴られるジャック・ドゥミ脚本・監督によるフランス産ミュージカル。
ミシェル・ルグランによる主題歌も評判になり大ヒット。
美術はベルナール・エヴァン。撮影はジャン・ラビエ。
原題:(仏)Les Parapluies de Cherbourg、( 英)The Umbrellas of Cherbourg)
(1964、1時間31分)

物語は三部に別れて展開する。
・第一部「 旅立ち le départ」(1957年11月)
・第二部「 不在 l'absence」(1958年1月-2月-3月-4月)
・第三部「 帰還 le retour」
(1959年3月-4月-6月-1963年12月)

1957年、アルジェリア戦争中のフランス、港町シェルブール。
雨傘店の娘・17歳のジュヌヴィエーヴと近所に住む20歳の自動車整備工ギーは将来を誓い合った恋人同士。
だが、ギーに召集令状が届き2年間の兵役に着くことに。
ジュヌビエーブの母親は店の経営難を乗り切るために助けてくれた宝石商との結婚を願うが、出発の前日結ばれたジュヌヴィエーヴはギイとの子を妊娠していた…。

~登場人物~
・ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ、歌はダニエル・リカーリ):ヒロイン。18歳。町の雨傘店の娘。母と2人暮らし。ギイとの子を妊娠する。
・ギイ・フーシェ (ニーノ・カステルヌオーヴォ、歌はジョゼ・バルテル):20歳。自動車整備工。おばさんと2人暮らし。アルジェリア戦争に招集される。
・エムリ夫人 (アンヌ・ヴェルノン 、歌はクリスチアーヌ・ルグラン←監督の姉):ヒロインの母。夫とは死別。雨傘店を営む。経営が厳しい中、多額の税金請求がくる。
・エリーズおばさん (ミレーユ・ペレー 、歌はクレール・レクレール):ギイの伯母。育ての親。病身。
・マドレーヌ(エレン・ファルナー、歌はクローディヌ・ムニエル):エリーズおばさんの世話をしている身寄りのない少女。おとなしく、気立てがやさしい。
・ローラン・カサール( マルク・ミシェル、歌はジョルジュ・ブランヌ):裕福で誠実な宝石商。

「別れは残酷なものよ。でも、いずれ時が解決してくれる。あなたは愛だと言うけれど、愛って何か分かってるの?愛だと感じてることが確かだって言える?」
La séparation est  cruelle en fait.
Mais le temps arrange bien des choses.
Tu parles de l'amour, mais que sais-tu de  l'amour ?
Es-tu sûre de tes  sentiments ?

「一緒にいないって奇妙なものね。 ギイが行ってしまってから何年もたったような気がするの。この写真を見ていると本当の顔まで忘れてしまう。…」
C'est drôle l'absence.
Il me semble  que Guy est parti depuis des années.
Quand je regarde centte photo, J'oublie jusqu'à son visage. …

戦争によって引き裂かれた若い男女。
青春との決別を美しい映像と哀愁にみちた素敵なテーマ曲で綴った珠玉のラブストーリー。
切ない過去を背負いながら、それぞれの人生に向かうラスト・シーンがすばらしい。

主演のドヌーヴは撮影当時21歳。
映画の撮影前に3年間恋人だったロジェ・ヴァディム監督と別れ、未婚の母となっていた。
この作品は1964年開催されたカンヌ映画祭でグランプリを受賞したが、ヴァディム監督の忘れ形見を連れてカンヌ入りしたドヌーヴは、そこでヴァデムと新しい恋人ジェーン・フォンダの仲むつまじい姿を見かけることになった。ドヌーヴはホテルの部屋で愛児を抱きしめ一晩中泣き明かしたという。
また、ジャック・ドゥミはこの作品の製作に着手する1年程前に、3つ年上のアニエス・ヴァルダ監督と結婚。ヴァルダとの関係が映画製作に好影響を与えたような気がする。
「『シェルブールの雨傘』のようなミュージカル」を撮ったのは…生きる喜び、つまり恋の喜びを、リズムにのせて歌い上げるということが、そもそもの目的だった。恋する喜びはリズムと美しい色彩によってこそ初めて表現できると思ったんだ」~ジャック・ドゥミ~
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