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ビスマルク号を撃沈せよ!の一人旅のレビュー・感想・評価

ビスマルク号を撃沈せよ!(1959年製作の映画)
4.0
ルイス・ギルバート監督作。

二次大戦時の北大西洋を舞台に、ドイツ軍艦ビスマルクとイギリス海軍の戦いを描いた戦争ドラマ。
砲撃の応酬に圧倒される海戦と、イギリス本土の作戦本部で練られていく戦略の双方が描かれている。戦略が決定されるまでの過程は緻密に描かれていて見応えがある。作戦本部ではビスマルクを撃沈させるための作戦会議が度々開かれ、巨大な海図の上にはチェス駒のようにビスマルクやイギリス軍艦の小型模型が置かれる。前線から即時で送られてくる情報をもとに、ビスマルクの進路を予想し、その予想をもとに自国艦隊の行動を決定する。海図上でビスマルクとイギリス軍艦の模型が衝突すると、実際の海上でも両軍艦が激しく衝突する。陣取りゲームのようにシミュレーションされた机上の海戦が、やがて実際の海戦へとリンクしていくのだ。
主人公は作戦部長のシェパード大佐。戦場で得た知識を武器に、敵の行動を次々と読んでいく。寝る間も惜しんで作戦を練り続ける大佐の姿が印象的だ。作戦本部の士官は直接的に敵と戦闘しないが、決定一つで戦況が簡単に左右してしまう。頭脳戦とはいえ精神的にかなりのハードワークだ。緻密に作戦が決定される過程を描くとともに、家族に対する愛と作戦部長としての使命感の狭間で揺れ動くシェパード大佐の葛藤も映し出される。世界を巻き込む大戦の緊迫した情勢と、その歯車となった一個人の戦争への向き合い方まで丁寧に描かれているのだ。
そして、北大西洋上で繰り広げられる海戦は圧巻の迫力だ。砲弾を装填するシーン、“Fire!” “Shoot!”の命令で一斉に砲撃するシーン、敵艦に被弾し水飛沫とともに激しく爆発炎上するシーン。作戦本部の風景同様に、海戦の様子もリアリティに満ちている。霧の奥から巨大な軍艦ビスマルクが姿を現す際の恐怖と絶望感は圧倒的。海上という逃げ場のない空間が船員の恐怖心を一層高めるのだ。
また、残念なところはドイツ軍も英語を話すため、たまにどっちがどっちだか分かりづらく感じてしまうこと。見分けるポイントはドイツ軍の黒の軍服と鉄十字のエンブレムだ。
ちなみに、ビスマルクの進水式のシーンは当時の実際の映像を使用している。
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