チッコーネ

サスペリアのチッコーネのレビュー・感想・評価

サスペリア(1977年製作の映画)
4.0
公開時は今ほど選択肢がなかったせいで『恐怖映画の代表的作品』に祭り上げられたままなのだろうが、内容はどちらかというとダークファンタジーの部類で、全然怖くない。
色彩感覚が非常にポップなのがうれしく、セットにもやや倒錯気味のセンスが光っている。
血みどろシーンは豊富だが、明らかに絵の具の色で「殺戮をカリカチュアしております」という感じ。
ただし蛆虫のチョイスだけは、今観ても充分に変態的。
「寮の屋根裏に蛆が湧いたので、今日は皆、練習場で寝ましょう」なんて脚本は、映画で初めて観た。

『魔女』がモチーフとなっているため、男の俳優はすべて添え物。
ネコ科の容姿が魅力的なヒロインは意外に声が低く、キーキー喚かないのが麗しい。

ホラー映画の存在意義は「ランニングタイム中、別世界へ逃避できること」に尽きるのではと思うが、本作は2020年代の感覚だと『お化け屋敷レベルの恐怖』をもたらすかたちで、今後もその役割を堅実に果たし続けそう。