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ヤンヤン 夏の想い出のIKのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.4
またとない機会があってやり直すだとか、対処できない事態が解決できるようになるなんてことはない。その時とは立場が変わるだけ。
ヤンヤンの眼差しは正しさが多分に含まれていて怖い。大人には怖い。真実の片側だけと形容する彼の物事の捉え方やその自分では見ることのできない片側を教えようとする人としてあまりに正しすぎる直感と考え。
祖母に対し罪悪感を抱えていたティンティンが許しを得たと膝に頭をもたげて寄りかかっている姿がとても耽美的だった。
不安定な自己の中で頼りであり唯一の愛であったNJを失い、時を経て裕福で余裕がある素敵な女性として生活をしている彼女が昔のようになってしまうあのシーンの凄さ。
両親だけでなく理解してほしかった最愛の人にまで将来について指図されたからと恋人を置き去りにした彼の永遠に大人になりきれないような青年の頑なさは時に潔癖だし時に純粋だし時に傲慢だし時に聡明で、それが子のティンティンやヤンヤンにも強く現れているのがああ…となる。人を殺すことがわからない、目覚めたくないというティンティンの幻想なきこの世界への諦念とかさ。
みんな生きづらいんだけどさ、NJ・ティンティン・ヤンヤンの生きづらさってこの映画の示す優しさなんだよね。救いなんだよね。だからこの映画が好き。
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