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クレイマー、クレイマーのSariのレビュー・感想・評価

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
4.0
ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープが夫婦役で共演し、79年度のアカデミー賞で5部門で受賞したファミリードラマ。

仕事人間の男テッド(ダスティン・ホフマン)がその日も夜遅く帰宅すると、荷物をまとめた妻ジョアンナ(メリル・ストリープ)が、この家を出ると言って彼を待ち受けていた。本気にしなかったテッドだったが、妻は本当に息子ビリー(ジャスティン・ヘンリー)を置いて出ていった。
これまでは働いて金を稼いでくるばかりだったテッドは、子供に時間と愛情を捧げてこなかっが、失意の中、試行錯誤しながらひとりで子供の世話を覚えていく。

もちろん、映画では何事もスムーズに運ぶはすがないので、テッドが育児のコツを飲みこみはじめ、最初は距離があった父と息子が一緒に生活するなかで失敗やケンカを乗り越えてだんだんと心が通じ合い暮らしていくようになる。すると、そこへジョアンナが帰ってきて、息子の養育権を主張し、二人はビリーの親権をめぐり裁判で争うことになるのだが…。

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1970年代はアーサー・ヒラー監督の古風なラブストーリー「ある愛の詩」(1970年)で始まったが、最後を飾ったのは脚本・監督ロバート・ベントンによる、とても現代的なこの感動作。当時アメリカでは、社会問題となっていた離婚や親権争いを真正面から捉えた作品だ。

仕事人間の夫と、家庭を顧みない夫にストレスを抱えた専業主婦というステレオタイプな夫婦像が描かれるが、明らかにウーマンリヴやフェミニズムの影響が窺える。
ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープふたり共に力強く自然な演技を披露しており、ことに緊張感のある法廷場面での演技は素晴らしい。
なおアカデミー賞主演男優賞と助演女優賞、作品賞も与えられた。息子役ジャスティン・ヘンリーが父親に反抗する演技が上手く、可愛い過ぎないところが良い。

ベントン監督の演出も、デッドと息子が結束する場面など、凝り過ぎてわざとらしくなりがちな場面だが、抑制したタッチにしている。別居や離婚が、子供だけでなく親たちにも与える本当のインパクトを取りあげた点でも魅力的で感動的な作品。
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