半兵衛

カラー・オブ・ハートの半兵衛のレビュー・感想・評価

カラー・オブ・ハート(1998年製作の映画)
4.0
理想的な家庭を描いた古きテレビドラマが、実は視聴者の願望を一方的に押し付けられた自由のない世界というアイデアが素晴らしくて最期まで楽しむことが出来た。ユートピアとディストピアは実は表裏一体という理想郷の本質を鋭く突いていることも◎。

一視聴者として楽しんでいたマニアの青年がふとしたことからそんなテレビドラマの世界に入り込むも、ドラマ社会の欺瞞に気付き登場人物たちに人間性を取り戻させようとする姿はいかにもアメリカ的な理想の人物でそんなヘンリー・フォンダやジェームズ・スチュワートを思わせるキャラをトビー・マグワイアが見事に演じてみせてくれる。そんな彼がラストに見せる成長した姿にもホロリとする。そのせいで肝心のディストピアを皮肉った毒が薄まった嫌いもあるけれど、これはこれで面白い。

ドラマには全く興味がないのに一緒にドラマの世界に入り込む遊ぶのが好きな妹もいい味を出していて、セックスも自由の象徴だという映画のもう一つのテーマを体現。そんな現実主義者だった妹が選ぶ結末も主人公と対照的になっていて余韻を深くする。

モノクロドラマの世界で白黒の人間=意思を奪われた人間、カラーになった人間=人間性に目覚めた人と映像で表現するセンスも素晴らしい。
半兵衛

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