トムヤムくん

カラー・オブ・ハートのトムヤムくんのレビュー・感想・評価

カラー・オブ・ハート(1998年製作の映画)
4.4
仲の悪い双子の兄妹が、50年代の白黒TVドラマ『プレザントヴィル』の世界に入り込んでしまう話。いや、舐めてた。めちゃくちゃ面白い。

二人が来たことで白黒だった世界に少しずつ色が付いていくという「こんな設定を思いついた時点で勝利!」みたいな作品で、きっと『ティーンビーチ・ムービー』や『ワンダヴィジョン』とかは本作の影響を受けていると思う。知らんけど。

あとそれだけじゃなくて、毎日同じ日々の繰り返しだったのに、とある「気付き」によって日常が少しずつ変化していく展開はめっちゃ『バービー』っぽいし、ドラマ内のキャラクターたちが性に目覚めるシーンは、白黒なのも相まって『哀れなるものたち』にそっくり。意外と前衛的なことをしている作品なのかもしれないと思った。

後半になると、白黒側が不変主義を貫く保守派として、カラー側は新しい価値観を受容するリベラル派として争いが起こる。まるで歴史の授業を見ているようだった。

また配役がとにかく良い。妹リース・ウィザースプーンがなぜキューティ・ブロンドに選ばれたのか、兄ユアン・マクレガーがなぜピーター・パーカーに選ばれたのがよくわかる。二人の(ドラマ内の)両親を演じたジョーン・アレンとウィリアム・H・メイシーも素晴らしすぎる。途中からは二人のことばかり考えてしまうほどには圧巻だった。まさに物語の魂だと思う。

ただ少し気になる点もあって、例えばさっきまでカラーだったモブが群衆の中に紛れた途端、なぜか白黒に戻ってしまっていたり(特にダイナーで本の続きを聞くシーン)、あくまでドラマ内のキャラクターとはいえ、その役を演じた現実の役者たちには何か影響はあったのか…?とかどうでもいい事まで考えてしまったり。それに結局あのおじさんは何者なんだよ!とか。

ただどれも些細な疑問なだけで全体的にはめちゃくちゃ良い。最高だった。エンタメ性もメッセージ性も芸術性も全てこれくらいでいいんだよ!っていう丁度ベストなラインを攻めた映画だった。