さいとぅおんぶりー

他人の顔のさいとぅおんぶりーのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
4.2
新橋ミユンヘンのシーンが特に好き、さりげなく安部公房本人やら武満徹やら当時の文化人が勢揃いして映っている。
何故わざわざミュンヘンなのか?これは安部公房が当時ハイデッガー•ヤスパース•ニーチェ•リルケなどドイツ文化圏に属する実存主義に傾倒していてドイツに心酔して居たことをアイロニカルに示唆しているから。
毎回酒場では男がドイツビールを呑んで精神科医(ユング)に自己分析を報告する場だったからこそ二重三重の暗喩が安部公房好きには堪らない演出でした。物語りラストも原作と違う映画ならではの演出で良かった。
これを言ったら元も子もないのですが優れた芸術作品は産まれた時点でその媒体の持つ性質と結合しているのでどうしても元の文学が勝ってしまうのが正直な気持ち。