『花と龍』によく出てくる女侠客島村ギンを主役にして製作された映画で、彼女が九州の鉄道事業を支援して全盛期を築くもその後は落ちぶれてひっそりと亡くなるまで菊島隆三脚本による骨太なタッチで描かれる。

亭主である田中春男よりも圧倒的な存在感を放ち、度胸もある女侠客を原作に惚れ込んで自ら映画化に動いた清川虹子が熱演。そんな彼女の熱意に感化されてか三國連太郎、森繁久彌、山田五十鈴、嵯峨三智子、淡路恵子、近衛十四郎といった豪華なキャストが集結しているのも見物。あと原作者の火野葦平もワンシーン出演している。

またこの映画の見所はやくざ同士のいさかいばかりではなく、主人公のギンの女性としての心情を繊細に描いているところである。彼女は亭主がいるもののその関係は男女の繋がりはなく、それに対する不満や元々男性への情熱的な性格のため次々にイケメンに目を付けてはくっつこうとする。窮地に陥っていた三國演じる吉田磯吉を助けたのもそうした下心があるからだし、どんなに成功しても男への欲求を忘れられない彼女は乱暴者のアウトローだがイケメンな森美樹の元へ走ってしまい最終的には組を没落させ森をヒモのように養う存在にまで落ちぶれる。そんな女性の業を鋭く付くことでこの映画は独特な味わいを醸し出す。

建設中の鉄道橋を原寸大で再現するなど明治の風俗が香り立つ美術が素晴らしい。

やくざ社会の空しさが漂うラストが印象的。

清川虹子の男勝りの豪快な主人公がはまり役。後半は一転して、女性の弱さが涙を誘う。しかし、三國連太郎はカッコいいなあ。