動物と人間の大きな違いは言語を持っているかどうかという考え方があって
言語は概念を記号化したものでもあるわけで
人間同士でも国や地域で言語は異なるから、置き換えができない言葉の存在を考えると当然それぞれが持つ概念にも多少のズレは生じると思うけれど
イチャンドンという監督の作品に共通するテーマのひとつに人と人との強い関わりというのがあると思っていて
これを日本語で端的に言い表す単語がなく、英語のcommitmentが一番しっくりくる
辞書から文学的な意味をひろうと、責任、約束、傾倒、献身といったところ
のっぴきならない状況で何かしらを負った人と人との関わりあい、という意味の言葉なのだと自分なりに思っている
予定調和的に、不可避な出会いをした人と人との関わりようといっていいかもしれない
この作品、重層的な意味で目を背けたくなるくらい普遍とは言いがたい男と女のコミットメントを描いている
健常者同士でも起こりうる男女の情念を、そうではない登場人物を設定することで二人の情念の増幅と他者による反動を強烈な振り子運動として表現している
スタイルもアプローチも異なるけれど、コミットメントをテーマに描き続ける村上春樹との共通点が見えた気がして、イチャンドンが村上作品を下敷きにした「バーニング」を手がけたのは必然なのだと思えた
人間ができていない自分には重すぎるし、また見たいとは思わないけれど、見てよかったとは思える重量級作品
イチャンドン 4/6