EDDIE

百万円と苦虫女のEDDIEのレビュー・感想・評価

百万円と苦虫女(2008年製作の映画)
4.0
他人から裏切られ続ける人生。自分の意見を押し殺すことで苦虫を噛み潰したような笑顔になる女。
新たな出会いのために別れがある…そう思い込む一方で物語のその後を思い描いた。森山未來がお金を借りる意味、想像の範疇だったけどそれで良かった。
桃娘のくだりはきつい。

〈感想〉
タナダユキ監督の最新作『マイ・ブロークン・マリコ』公開を記念して、未鑑賞作品を観てみました。
とはいえ僕は彼女の作品を『ロマンスドール』と『浜の朝日の嘘つきどもと』の2作品しか観たことがありません。
いくつか観たい作品はあるものの…という感じだったので、この機会に一番気になっていた『百万円と苦虫女』を。

まぁとにかく不幸の連続ですよね。
主人公の鈴子は家族もなんだか崩壊寸前で、実は弟も学校で色々と問題を抱えていて、そして物語の始まりとしては最悪なルームシェアから。
その後ワケあって東京を出て、田舎に出稼ぎに行くことに。
最初は海の家、次に山あいの農家、そして地方のホームセンターと移っていきます。
街を移るタイミングというのが、本作のポイントですね。
同時進行で描かれる弟の拓也との関係性。

鈴子って物事をはっきりと意見できない弱さを持っているんですけど、これって兄弟同士でも同じで、家族の中で2人は最初仲良くないんですけど、徐々に仲良くなって兄弟の絆を築いていくんです。
で、鈴子が出稼ぎに行って以降も手紙でやりとりするわけなんですが、離れていればそれぞれの抱える問題なんて知る由もありません。弟も姉に似てはっきり言えないタイプなんですね。それは心配かけたくないっていう優しさでもあるとは思うんですけど。

一番キツかったのは農家のくだり。
確かに鈴子は農家の人たちに施しを受けています。そんな優しさや親切心を武器に振りかざして、他人に自分たちの理想を押し付けるサマがあまりにも醜悪。
観た人ならわかると思うんですが、この“桃娘”のくだりは本当にキツかったです。

映画の最後の舞台としてはホームセンターなんですけど、ここで彼女に転機が訪れる…かと思いきや、みたいなね。
中島くん、本当にいいやつ。だけど、肝心な時に2人とも本当の気持ちを押し殺しちゃう。
これってもっとハッピーエンドにもできた気がするんですよね。
けど、現実ってそう甘くないって教訓的な意味であれば、逆に好印象を抱きました。
だって彼らの人生はこれからも映画の中で続いていくわけですからね。映画のその後を妄想することで、一層楽しめる作品だなと感じました。

〈キャスト〉
フリーター・佐藤鈴子(蒼井優)

【東京】
鈴子の父(矢島健一)
鈴子の母(キムラ緑子)
鈴子の弟・拓也(齋藤隆成)
バイト仲間・リコ(平岩紙)
拓也の担任(江口のりこ)
リコの元彼氏(弓削智久)
刑務官(嶋田久作)
刑事(モロ師岡)
真吾(鈴木達也)

【海辺の町】
海の家の主人(斎藤歩)
海の家のおかみさん(安藤玉恵)
海の家の息子(宇都秀星)
海の家でナンパする男・ユウキ(竹財輝之助)

【山あいの村】
桃農家の絹さん(佐々木すみ江)
桃農家の長男(ピエール瀧)
上田村長(石田太郎)
喫茶店のマスター・白石(笹野高史)

【ある地方都市】
大学生・ホームセンターでの同僚中島くん(森山未來)
ホームセンターの新入り(悠城早矢)
仕事先の小暮主任(堀部圭亮)

※2022年自宅鑑賞177本目
EDDIE

EDDIE