そーた

百万円と苦虫女のそーたのレビュー・感想・評価

百万円と苦虫女(2008年製作の映画)
4.0
そう、来るか

いい映画って不意に出会うものですね。

この映画もそんな類いの映画。
事前情報もなしに、蒼井優かぁって感じで見たんです。

いやいや、好みです、こういうやつ。

ちょっと普通の映画にはない独特のユーモアがあります。

冒頭で蒼井優は刑務所に入るんですが、出所のシーンで守衛さんに「2度と来るんじゃないぞ。」ってお決まりのセリフを言われます。

すると、蒼井優が空を見上げ「シャバか」って言う。

ここで、この演出なんだかベタ過ぎるだろってちょっと幻滅しかけるわけです。

こちらの心を見透かすように、蒼井優がその後「シャバダバ、シャバダバ~」って投げやりに歌うんですね。

「そう、来るか~」ってここで思うわけ。

食卓での家族喧嘩のシーンもセリフがベタなのに演出が変わっていておもしろい雰囲気に仕上がっている。

普通の映画とのちょっとしたづれがとても斬新で、なかなか他にはない映画だと思います。

そして、蒼井優のマイペースさがこの映画の絶妙なユーモア感を支えている。

独特だけど独特過ぎずむしろ自然体な彼女の演技のバランス感覚は凄いと思います。

出所後の物語は三部構成。

各話の登場人物同士は出会わないので短編として見ていくこともできるんですが、実は彼女の心の状態は各話ごとに違っている。

彼女が大切にするカーテンがキーポイント。

その辺りのさりげない演出がまたうまいなぁと感じます。

後半登場する森山未來がまたいいですね。

この二人の掛け合いがとにかく最高。

ハラハラしてしまうライブ感のようなものがあって、アドリブっぽさがある。

そんな二人の長回しのシーンが特に素晴らしい。

動きのあるアクションなのにセリフの掛け合いが絶妙で二人とも演技ということを忘れているかのよう。

こういうのやられちゃうとね、ダメなんですよ、僕。

ラストがね、更に僕好み。

そう、来るか~。

エンドロールで余韻に浸りたくなる。
これ、いい映画の証拠です。
そーた

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