あんじょーら

哀しき獣のあんじょーらのレビュー・感想・評価

哀しき獣(2010年製作の映画)
2.7
「チェイサー」が面白かったので観てきました!



中国の北朝鮮と接する地域に延辺朝鮮族自治州があり、その生活は非常に厳しく、さらに中国人に迫害までは行きませんが目に見えない程度の差別う受けています。そこでタクシー運転手をして生活するグナム(ハ・ジョンウン【チェイサーでの猟奇殺人者役】)は生活が貧しく、妻を韓国に出稼ぎに出すためにブローカーに多額の借金をしたのですが、2年経って妻からの連絡は途絶えてしまった事で自暴自棄的な生活に陥り、麻雀で生活費さえ摩ってしまう毎日です。そんなグナムに接触してきた、同じ朝鮮族であるミョン(キム・ユンソク【チェイサーでの元刑事役】)が仕事を依頼してきます。それは・・・というのが冒頭です。



いや~すさまじくハードな映画でした。謎が謎を呼ぶ展開ですし、先が見えないことこの上ないのですが、それよりも何より映画のスピードの速さが強烈でした。今まで味わったことが無い速さです。基本的にはアクション作品は子供の頃しか見てなくて、最近は全然なんですけれど、この速さはちょっと無いと思います。


その見せ方も特徴があって、カメラは暗い部分が多く、しかも揺れることでの臨場感が大きく、こういう作品が好きな方にはタマラナイのではないか?と思います。構成も変わっていて、各章に分かれており、起承転結のごとく4つです。巻き込まれ方としても秀逸なやり方であると感じました。


で、やはり「チェイサー」の時のキャラクターを逆に配役したようなところも面白いんですが、それぞれが以前の人に見えないくらい自然で凄かったです。しかし、この映画は「熱くて、速い」です、映像も、役者も、です。そして、例えとして園 子温監督の演出より、ずっとずっと同じ熱くとも、飲み込みやすさを、感じました。自然では全然無いです、どちらの場合でも、それにどちらかと言えば「哀しき獣」の方が超人的で非現実的であるにも関わらず、引き込まれました。もちろん志向も違いますし、映像も全くベクトルが違いますけれど、少なくともシリアスな場面をよりシリアスに、ズレる可笑しさを、より自然に、感じさせました。好みの問題も大きいでしょうけれど。


が、私は「チェイサー」のような謎と巻き込まれ、そこに絡む人間模様のような映画(もちろん好みの問題でしょうけれど)を期待して行ったので少し肩透かしを食らったように感じました。どちらかと言えば、「チェイサー」の動的な部分をより特化した映画だと言えると思います。


アクション映画が好きな方にオススメ致します。


アテンション・プリーズ
以下ネタバレも含んだ話しです、未見の方はご注意くださいませ。

































「チェイサー」よりももっともっと過激になっているのは良いとしても、どうも腑に落ちないシーンが多い気がしました。腑に落ちない場面を考えてもいくつかあるのですが、その中でも特に理解しにくいのが、とある屋敷で眠りにつく際に電話をかけるのですが、この電話が何処にかかっていたのか?何に関連しているのかが分からない。また、銀行員である最後の黒幕の存在も微妙に腑に落ちませんでした。何かひとつピースが噛み合わない感じがしてしまったのです。また、社長のダメな手下とグナムが偶然に出会うのも、ちょっと。


それでも、展開は急すぎるきらいはあるものの、グナムがだんだんと超人的で常習犯的な、犯罪者として変わっていく部分は個人的には説得力を感じました。ただ、もう少し警察頑張れ!とは思いますけれど、これは「チェイサー」でも思いましたが。


また、超人的な人物がたくさん出てくる部分も乗り切れなくさせました。ハリウッド的なヒーローものならいざ知らず、普通の人間であるグナムやミョンの覚悟が魅せるのだとしても、ちょっと異常に見えました。ナイフの刺し傷もっと痛いと思います。もう何回も死んじゃうよね、という場面が多くてそこがどうしても映画に没頭出来ませんでした。穿ってみると都合が良すぎる主人公たちに見えてしまうのです。しかもあまりに短絡的に人を死に追いやりながらも、主要なキャラクターはなかなか死なないのも、ちょっと。