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ジェロームの時間
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『ジェロームの時間』に投稿された感想・評価

『ジェロームの時間』の「ジェローム」が指すのは、ドースキーの長年のパートナーであるジェローム・ヒラーのことで、本作ではそんな二人がニュージャージー州のオワッサ湖周辺やマンハッタンで過ごした日常が実験的に記録されている。その親密なまなざしゆえに、本作は「日記映画」の系譜に連なるだけでなく、クィア映画的な文脈においても論じられてきた。
もっとも、本作の実験性は、映像表現に限って言えば、アメリカ実験映画(とりわけ「日記映画」)の伝統から大きく逸脱するものではない。断片的なイメージの交錯、自然光への鋭敏な感受、偶然性を含み込む撮影手法──その多くは同系譜に位置づけられる王道的な実践に見える。では本作を際立たせているものはなにか。それはむしろ映像それ以上に音の扱い方にあるように思われる。アメリカ実験映画の系譜に連関する映像実践を保ちながらも、本作はサイレントという選択によって観客の時間感覚を大胆に組み替える。つまりは音の不在によって、観客が普段無意識に従っている時間感覚──会話のリズム、環境音の不規則性、出来事の因果を示す聴覚的な導線──などが宙吊りにされるということだ。その結果、映画内の時間は目的地へと向かう線形的なものから、ただ流れ、滞留し、光の移ろいや身体の気配に寄り添うものに変質する。ここで観客の感覚は、予定や責任に区切られた社会的時間から一時的に解放されうるだろう。

本作において時間の存在がかろうじて知覚されるのは、四季で区切られた映画構成(第一部は春から夏、第二部は秋から冬にかけて)と、その四季の到来を予感させるショット群に限られる。木々の間から差す光、湖面の変化、みかんの収穫、紅葉に満ちた山肌をなでる風、小枝でさえ凍る冬の朝──そうした緩やかな循環の中心にあるのは、いつもドースキーとヒラーの二人が共有的に経験する時間の親密さなのだ。
したがって、『ジェロームの時間』の「時間」とは、時計によって計測される可視的時間、あるいは社会的規範のリズムとしての時間でもなく、誰かと生を共にすることでのみ立ち現れる関係的な時間感覚のことであると言えよう。

ちなみに、ドースキーは自身の作品をセルロイドフィルムでのみ上映することを許可しているコテコテの反商業主義作家であるため、本作の(というか彼のフィルモグラフィすべての)DVDというのは存在しません。
今回は奇跡的にイメージフォーラムのアメリカ実験映画セレクションで上映されたけど、次はいつ観れることやら...。
こういうものに感動できる感性

ほんの少しだけ自分と違う
最初に送られてきたビデオと同じだった

ずっとそういう風に生きていたい

労働する時間なんていらない
そういうことがしたいって微塵も思ってない
「日記」映画の秀作。サイレントながら、カメラの動き、編集のリズム、コマ落としなどの妙味で見せる実験映画。16ミリ、50分。