まさか邦画でサニー千葉(あと眠狂四郎の若富もそうだったはず)よりも先に森繁久彌が少林寺拳法のアクションを披露しているとは、そりゃ後年の千葉真一や香港アクションスターのような本格的な拳法アクションとはいかないけれど公開当時40を超えている森繁が体当たりで格闘したり走ったりする姿は感動すら覚えた。

話は奥さんを殺された主人公の勘太郎(森繁久彌)が仇である浪人(丹波哲郎)を追いつつも、習った少林寺拳法を武器に行く先々で女を泣かせる悪党たちを退治していくという歌ありお色気ありアクションありの明朗な股旅娯楽時代劇で、久松静児監督によるエンタメのツボを押さえたテンポの良い演出とマキノ譲りのコミカルさと決めるところは決める森繁の熱演が見ていて楽しい佳作に仕上がっている。その一方で勧善懲悪な内容のなかに主人公がやくざに虐げられる一家を助けたことで事態を悪化させたりといったシビアな部分も描くことで話に深みをもたらしている。

そして森繁と彼の相方的存在である藤山寛美のコンビによる息のあった掛け合いの素晴らしさ、二人とも笑いというものを極めているためか半世紀前の作品なのにヘタな漫才よりも爆笑できる仕上がりになっているのが凄い。アダなスリの姐御・淡路恵子もハマっているし、森繁に好きな女性をとられたことに逆恨みして彼女を殺害するというネクラなキャラを演じる丹波哲郎も見所。

ラストは予想していた通りのところに着地するが、敢えて寛大な処置を施す森繁の判断が男らしくて痺れる。

実質友情出演みたいな出方をする二木てるみのシーンに癒される、同時に久松監督や森繁との信頼関係の深さを感じさせる。

森繁の勘太郎は少林寺拳法の使い手。花嫁を殺した丹波哲郎を探して仇を討つ旅。原作は長谷川伸「勘パの勘ちゃん」

記録。内容記憶なし。