みつば

犬神家の一族のみつばのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(1976年製作の映画)
3.7
名士犬神佐兵衛が死に、遺言状が公開されると、内容は孫息子3人のうち1人と結婚することを条件に、血縁ではない珠世へ譲るという内容だった。3人は珠世を自分の物にしようとするが、やがて恐ろしい殺人事件へと発展していく。

邦画は滅多に見ないのですが、金田一耕助が好きで、2006年版は劇場に見に行きました。どちらかと言うと、古谷一行のドラマ版 横溝正史シリーズが好きなのですが、映画となると石坂浩二がいいですね。他の俳優は名前を見てもピンときません。
古谷一行の金田一は、人懐っこい感じが金田一の優しさのように見えるし、あの頭を掻く仕草はこっちの方が好きです。振る舞いが大袈裟ともとれますが。
でも頭の良さそうな感じは、石坂浩二がぴったりだし、優しいとは少し違う紳士な感じが古谷一行とは別の雰囲気があって、静かに事件と、というより人と向き合う姿勢でよりスマートに見えます。

ドラマ版と違って、那須ホテルの女中はる(ドラマはキヨ)が信州弁ではないのですね。信州弁聞きたかったな。他にも製薬工場やケシなど少しずつ設定が違います。
はる役の坂口良子が本当にかわいくて…私が見た3つの犬神家の中ではダントツの女中です。さらに珠世も本当に美しい!ドラマの珠世は頭を抱えましたが、これは説得力あります。
そしてやはり佐清のインパクト。あのゴムマスクは原作とは違うようですが効果抜群ですね。被り直したときに、口元を動かすので不気味さ倍増。でも耳は少しも爛れてませんね…
役の心情を表しているような、独特の細かいカットが斬新で、緊張や恐怖が鋭く伝わってきます。
遺言状公開で姉妹が口論するシーンなど、忙しなくカットが変わるのは混乱がよく表れていました。
でもやっぱり、原作は分かりませんが、最後の松子の行動はドラマが素晴らしいです。紅を引き、着物に麝香の香りを移し着替え、煙草を吸う。
死体の顔や、死体を見つけたときの驚き方など時代の違いか、今見るとちょっと笑えますが、犬神佐兵衛の自己中心的な欲望や、それを受け継いだ上に父を憎む腹違いの娘たち、欲望の塊となった孫たち、佐兵衛が仕組んだとも言えるこの惨劇、そしてその背景にある戦争など、現代では感じられないものを味わえる映画だと思います。
◆お気に入りシーン
金田一:食べなさい食べなさい
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