一つ前で『イースタン・プロミス』とセットでと書いた手前、簡単に触れておきます。
「イラク戦争後、大量に殺害をして来た人が、何食わぬ顔で帰ってきて、普通の生活をしている怖さ」
これを狙ったんだと、当時クローネンバーグがインタビューに答えていたのを覚えています。
戦争状況で、兵士として作戦を実行した彼らを非難してるわけではなく、切り離された世界として、また暴力の正当化に警笛を鳴らしているのでしょう。
故にクローネンバーグは、暴力をファンタジーとして描く、アクション映画は撮らず、目をそらしたくなる様な、痛みを感じるバイオレンスとして、真っ当な暴力を観客に提示するんですね。
最近では暴力や派手さ抜きに、人間の嫌〜な部分をじわじわっと見せる老獪さが恐ろしい監督ですね。