半兵衛

男性の好きなスポーツの半兵衛のレビュー・感想・評価

男性の好きなスポーツ(1964年製作の映画)
3.7
原作は別にあるらしいのだが、ハワード・ホークス作品を何本か見ている人にとってはどうみても『赤ちゃん教育』のリメイクにしか見えない。そしてこの映画を見ると『赤ちゃん教育』や『ヒズ・ガール・フライデー』といった往年のホークス流スクリューボールコメディは性的衝動を押さえに押さえて作られていたことに気づかされる。

実際この映画はあからさまな性的メタファーや直接あるいは間接的な性描写が至るところに散りばめられているという変態的な事態に陥っており、アクションやコメディ、メロドラマなど何でもこなす職人監督の内面には深夜ラジオレベルのしょうもないエロ欲求があったのかと愕然してしまう。そもそもタイトルが意味深(英語だとクエスチョンになっている)だし、映画内で取り上げられる『男性の好きなスポーツ』が野球やサッカー、バスケではなくあまりスポーツのイメージがない釣りというのも考えれば考えるほどエロの連想しか出なくなる。それが確信にいたるのはオープニングで、男性が全く出てこず若き女性が肌も露にスポーツする姿ばかり出てくる青年向け漫画のような映像は音楽のノリで素晴らしい出だしになっているが、良く考えたら性的妄想ただ漏れでかなりヤバい。

映画の内容は面白いのだが元ネタが元ネタだけに、恋愛が絡んでいるのに一切叙情的なシーンが無いし漫画みたいなギャグがこれでもかと繰り出されるなどかなりかっ飛ばしている。森の中でスクーターに乗っている主人公が熊とぶつかり、熊がスクーターを操縦するシーンなんて思い付いても絶対映像化しない。主人公の男性とヒロインがキスするたびにインサートされる機関車同士の衝突映像も謎過ぎて笑える。

そしてハリウッド的なハッピーエンドのはずなのにやっぱりイカれているラストから、突如挿入される謎の映像で締める終わりかた、この映画でイカれてる奴らは多数出てくるが監督が一番クレイジーだと気づかせてくれる。
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