半兵衛

変態夫婦の過激愛/過激!! 変態夫婦の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.0
寺山修司作品みたいな観客を驚かせるアングラ演出と小津安二郎作品のような抑揚のない喋り方や感情を顔に出さない登場人物の会話が妙にマッチして、様々な形の性愛に振り回される登場人物たちの悲喜こもごものドラマに絶妙な味わいをもたらす。そしてそんな劇のなかで一人報われず、スクリーンを背に去っていく主人公影田の切なさと寂しさは都会の生々しい風景も相まって我々と同じく現実に埋没にしていくかのようでハッとさせられた。そして頭をよぎるこの映画の原題『人生の唯一の答えは愛かもしれない』。

男性同士や女性同士の関係性を声高にではなく、淡々と異性同士の恋愛とさして変わらないものとして描いているのがこのドラマの妙味。そのため彼らの真剣だからこそどこか可笑しいやりとりが鼻につくことなく自然に笑えてくる。

いつものオーバーアクトとは違う池島ゆたかや清水大敬、山本竜二の静謐演技も印象的で、殊更に自分のホモ性癖が原因で妻を女性にとられよりが戻せなくなってしまう池島ゆたかの凡人演技がひたすら状況振り回される主人公にマッチしていてどうすることも出来ない人間の悲哀を醸し出す。

先にも書いた通り細山監督による突飛な演出の数々もかなりのインパクトを放ち、中でも室内での性行為の最中に雪が降るというエキセントリックなのに情緒のある場面には舌を巻いた。そしてそれらを過剰にすることなく映画としてまとめあげる鈴木史郎カメラマンの技術も凄い。
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