入学した大学で様々な境遇の学生たちと交流しながら、暴力団組長である父親の跡を継ぐべきかを悩む青年を描いた、舛田利雄監督の裕次郎映画。芦川いづみは、裕次郎の同級生で、黒い噂のある政治家と母親の関係に悩む有名料亭の娘というヒロイン役を演じている一方で、北原三枝はその姉という少し引いた役になっている。何ともぎこちない演技で脇役として出ている笹森礼子は本作がデビュー作。
原作は石原慎太郎の同名小説であるが、裕次郎が演じる主人公としては物足りなかったのか、原作の内容(というか主人公)を改変していて、それが大きく失敗している。小説は(慎太郎自身を投影したような)主人公の青年の大学生活を描いた青春譚であり、跡を継ぐべきか悩む組長の息子は主人公の同級生の一人に過ぎない(実際にこの人物のモデルがいる)。本作ではこの二人を混ぜ合わせてひとりの主人公としたために、大学生活を描く必要性が薄くなり、結果として青春譚とは言えない中途半端なヤクザ映画に仕上がっている。そんなこともあってか、何日か経てば内容を思い出せなくなるような印象の薄い映画である。
なお、1977年には三浦友和主演で再映画化されているが、そちらのほうは原作に忠実なようである。