ミサホ

ソナチネのミサホのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.2
北野作品は、制作の時系列を追って鑑賞するのが好ましいという。その意味も含めてしっかり咀嚼すると、やはりスルメのような味わいを堪能できるのだろう。

…が、そこをあっさりと投げてしまった。

『その男、凶暴につき』のあとの本作鑑賞だ。この2本の間に『3-4X10月』があるみたい。


村川(たけし)とその組の何人かは、抗争に対応するため、沖縄へ飛ばされる。(飛ばされるという表現が相応しいと思った)たけし一派の組織内での立場は危うい。

とりわけ、飲みの席でたけし一派をハブるところなんかは、露骨な嫌らしさを感じた。

この作品の魅力は、多くを語らない点だろうか。説明を尽くしてしまったら、答えはひとつになってしまう。それをしない、というのは、物事の複雑さや一筋縄ではいかない難しさを表している。

考え方や捉え方は様々だと言っているようで寛容さすら感じる。

まるで修学旅行かのような沖縄入りのあとのスナックでのドンパチは、地味でありながらもキレがあった。

そして、まるで吉田戦車の漫画のようなシュールな世界へ移行するのだ。沖縄の抜けるような青空の下、時が止まったかのような、ゆる〜い時間が流れる。

殺し合いなど、なかったようだ。

ジャケットにあるように、赤と青が鮮烈だ。それは、かつてあった燃えるような情熱と、今ではすっかり冷めてしまった思い。若い連中へのあったかい眼差しと組織への冷たい眼差し…。それらを色に例えているとも言える。(知らんけど)

そんな対比が冴える作品だ。そしてびっくりするほどの緩急が魅力的な作品だ。

アオブダイは、とても美味しい魚だ。確か、塩で煮たものをマヨネーズで食べたと記憶している。ぷりっぷりの食感を久しぶりに思い出した。
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