ぺんじん

ソナチネのぺんじんのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.7
沖縄の美しい青空と白い砂浜。そんな絵に描いたような景色の中で、徐々に破滅へと向かっていくヤクザたちを描いた本作。沖縄の浜辺でゆったりと流れる時間とそこに一瞬にして入り込む暴力と死の緩急がたまらなく素晴らしい…。

主役の村川を演じるのは本作の監督・脚本を務める北野武。ボスでは無いのだけど、組を取り仕切らなければいけない村川からは中間管理職の悲哀を感じさせる。お馬鹿で血の気のある若者の面倒を見なければいけない所なんかは、現実にビートたけしがたけし軍団の若い者を食べさせなければいけないという事実とシンクロしていて、かなり北野武&ビートたけしのリアルな苦悩を感じさせる部分だったりする。東京から来たヤクザが沖縄でボロいロケバスに乗せられるシーンは、きっとたけし軍団もこんな感じだったんだろうなと思って笑ってしまった!

ヤクザが沖縄の浜辺で束の間の休息を楽しむ場面はとても微笑ましいのだけど、村川が自分のこめかみに銃を突きつけるシーンなど、そこには暴力と死の気配が忍び込む。村川を好きなる女性は村川の「強さ」に憧れるのだけど、それも虚勢の上に作られたものでしかないと村川はうそぶく。遊びも殺しも終焉までの虚構に過ぎないと悟っている村川のドライな視線が頭から離れない。

突然に訪れるヤクザの夏休みの終わり。美しい静止画のようなショットを背景に、ヌーヴェルバーグのようなシュールな演出で暴力と権力の虚構性を描き切る様が本当に素晴らしい!北野武演出ここにあり!参りました…。

https://movietoybox.com/archives/2023/11/23/3055/
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