HAYATO

ソナチネのHAYATOのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.1
2024年116本目
凶暴な男、ここに眠る。
北野武監督の代表作の1つ
広域暴力団・北嶋組の友好団体である中松組が、沖縄の阿南組と抗争になった。組長からの命令により、北嶋組傘下の村川組組長・村川は助っ人として手下たちと共に沖縄へと出向く。しかし、抗争はますます激化し、手下たちが次々と命を落としていく。海岸沿いの空き家へと身を隠すことになった村川たちは、少年時代に戻ったかのように無邪気に遊んで過ごすが、愉快な時間はそう長くは続かない。
主演を務めるビートたけしさんの他、国舞亜矢さん、大杉漣さん、寺島進さん、勝村政信さん、矢島健一さん、渡辺哲さんらが出演。
音楽を担当したのは北野作品常連の久石譲さん。キャッチーな音色を奏でる劇中音楽には、録音したドラムのフレーズを逆回転させるなど、様々な実験的手法が取り入れられているそう。
本作は興行的には失敗したものの、ロンドン映画祭やカンヌ国際映画祭を経て欧州を中心に高く評価され、「キタニスト」(北野映画ファン)が世界的に誕生するきっかけとなった。北野監督自身も最も思い入れのある作品として、本作をあげたことがある。また、BBCの「21世紀に残したい映画100本」に選出され、クエンティン・タランティーノが絶賛した作品としても知られている。
突然訪れる圧倒的な暴力と静かな日常の対比、無駄を排したセリフ、シュールなユーモア、独特の「間」、緊迫感と虚無感が同居したような不思議な雰囲気。従来の映画作りの方程式を度外視した北野映画の美学が詰まった内容。
抗争から離れた日常で、相撲、花火、落とし穴など、無邪気に遊んで暇を潰すヤクザたち。生を謳歌する彼らのもとに唐突にやってくる死の描写はあまりにもショッキング。
死の影が迫る村川の「あんまり死ぬの怖がってるとな、死にたくなっちゃうんだ」という言葉。死への憧れを漂わせた男の生き様に、公開から1年後、バイク事故で生死の境を彷徨うことになる北野監督の死生観を垣間見た。
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