唯一無二の世界観と雰囲気。
これと同じような作品を作ろうとしても多分安っぽくなるし下位互換にしかならない気がする。
観る前はヤクザ映画だと思って敬遠してたのですが、そんな過去の自分をビンタしたい。独特の死生観に包まれた、とても美しい作品。
美しい海と晴れた青い空、沖縄という爽やかなロケーションなのに、この作品は常に死の匂いを纏っています。
随所に出てくる「青色」が死を表す色として使われているところがめちゃくちゃにお洒落。
確かに広重と同じくらい、青色の使い方が美しい…構図や空気感も相まって映像作品として芸術の域まで達している映画だと思います
終盤まで激しいシーンはありませんが何故か終始緊張感が漂っています。
今までヤクザとして背負ってきた肩書きや仕事を忘れたように、沖縄でのつかの間のモラトリアムを楽しむ主人公達。
ここでのモラトリアムは、人が「死」を前にした時に訪れるつかの間の「何も考えなくていい猶予時間」で、自分の死期を悟っている人間に訪れます。
今まで何人もの人を殺めてきたであろう男が子ども返りしたかのように無邪気に遊び、笑い、同時に暴力団の抗争が起きているにもかかわらず漂う静かな平穏はあまりにも異様で、それはとてつもなく「死」の匂いを感じさせます。
けれど観終わった後は鬱々とした気持ちにならないし、むしろ不思議な爽やかさすらあります。
役者陣の演技もナチュラルで生々しくて、
終始目に光のない北野武が怖い。
有名なガンロシアンルーレットのシーンは何度観てもゾクゾクします。
久石譲の手がけるメインテーマも最高。
夏の終わりに観たい作品です