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哀しみのトリスターナのkojikojiのレビュー・感想・評価

哀しみのトリスターナ(1970年製作の映画)
3.7
「昼顔」のルイス・ブニュエル監督とカトリーヌ・ドヌーブが再びタッグを組んだ作品。
ドヌーブの少女から憎しみに満ちた哀しい女性へ変貌してしていく姿が印象的だ。

16歳で親を失ったトリスターナ(カトリーヌ・ドヌーブ」は、老貴族のドン・ロペ(フェルナンド・レイ)の養女となる。しかし若いトリスターナを娘ではなく女としてみるようになるドン・ロペは、トリスターナに肉体的関係を求め、事実上の夫婦となる。
最初はドン・ロペの言うことを何でも聞いていたトリスターナだが、次第に自我に目覚め始める。
そんなある日、トリスターナは若い画家オラーシオ(フランコ・ネロ)と出会い、恋に落ちる。

養女に性的関係を求め自分の思いのままにする貴族という設定が、すごく古典的に感じた。しかも二人の関係性の描写は平面的で時代を感じさせる。
 ここでは絶対にエロスが欲しいところ。決してドヌーブがヌードになる必要も、ベッドシーンもいらない。ロペの視線と、ドヌーブの例えば首筋、髪、指などアップでいいし、ちょっとした仕草を入れれば、エロスはドヌーブだけに充分描けるのだ。

 ブランコ・ネロが演じる画家のオラーシオの描き方が、単純で深みがない。このオラーシオとトリスターナの関係をもうすこし上手く描けていれば、この映画ももっと面白い作品になったかもしれない。

ドヌーブは前年「幸せはパリで」を撮り、この年「トリスターナ」だから、まさに油が乗りきった時代だ。それだけにこの映画のドヌーブは一番美しいと思う。この映画では自我に目覚めオラーシオと出会う頃が特に輝いている。
ラストの豹変したドヌーブはメイク効果もあり別人のようだ。しかし、ドヌーブはここの演技が一番観客に見せたかったのではないだろうか。そんな気がした。 

No.1524 2023-554
1970年イタリア🇮🇹/フランス🇫🇷/スペイン🇪🇸映画
監督:ルイス・ブニュエル
脚本:ルイス・ブニュエル
フリオ・アレハンドロ
原作:ベニート・ペレス・ガルドス
音楽:クロード・デュラン
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