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チキンランのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

チキンラン(2000年製作の映画)
4.0

IndieWire誌が選ぶ21世紀のベストアニメーション映画60
(https://www.indiewire.com/feature/best-animated-movies-21st-century-pixar-studio-ghibli-1201895863/)
というランキングを見て大好きなウェス・アンダーソン『Fantastic Mr.FOX』が上位に入ってたりなかなか面白いランキング(スパイダーマン・アクロス・ザ・スパイダーバース楽しみ!)だったので、10位に入っているキャラ絵だけ見覚えのあった『チキン・ラン』を鑑賞。

■■あらすじ■■
柵の向こうの自由な世界を夢見るトゥイーディー養鶏場の雌鳥ジンジャーは、仲間たちと何度も脱走を試みては失敗を繰り返す日々。そんな時、お調子者の雄鳥ロッキーが現れる。ロッキーの指導の下、飛び方を練習するジンジャーたちだったが、その頃意地悪な女主人トゥイーディーはパイマシンを購入、養鶏場の雌鳥でチキンパイを作って一儲けしようと企んでいた。絶体絶命のニワトリたちは、最後の大脱走作戦を開始する。
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ドリームワークス社によるストップモーション・クレイアニメ。
トゥイーディーが経営する養鶏場で、ただ卵を産むことだけを強いられるチキン達。卵の生産チェックで卵を産めないと判明したチキンは、ローストチキンにして食べられると気づいた、養鶏場の中のリーダー的なチキン、ジンジャーは仲間に逃げ出そうと提案する。

大きくく括ると脱獄もの、というか囚人もののジャンルに入る。ただ堅い警備を知恵と工夫でどのように破るか、という種類のものではなく、チキン集団の中のメンターであるジンジャーが、仲間達に『自分達は搾取されている』『外の世界には自由な世界が広がっているから勇気を出して飛び出そう』と啓蒙する作品。
本作のジンジャーは『ショーシャンクの空に』のティム・ロビンス演じるアンディの役柄に重なって見える。刑務所での生活に飼い慣らされ、主体的に生きる事を見失った囚人達に、自由に生きる事の素晴らしさを身を持って伝えて、それが伝播する。キリスト教の宣教師的とも言えそう。

また、本作のキャラクター達の構造を見ると興味深い。
養鶏場のチキン達を見張る看守役が、トゥイーディーの夫。
トゥイーディーの夫は、自らチキン達を厳しく監視・管理しているのではなく妻であるトゥイーディー夫人(実質的な養鶏場のボス)から厳しく当たられ、養鶏場の運営のために重労働を強いられているように描かれる。
養鶏場のボス、トゥイーディー夫人かと言えば、日々、売上金の事を気にして、上手くいっていない経営の事をどうにか向上しようと苦心している。
終盤ではカタログで新しいチキンパイ製造器を見て、養鶏場をやめて収益性の良いチキンパイ工場を始めようとする。
搾取構造の一番上位には、限りなく利益を追い求める資本主義が存在し、それが人々を苦しめているのだ、というアンチ資本主義、あるいは社会主義的なメッセージがプロットの奥に潜んでいるように感じる。

途中から登場し、アメリカから来た自由の象徴みたいなキャラ、ロッキーが実はサーカス団でパフォーマンスのために危険は飛行をさせらていた、と示される展開にも中々に皮肉で面白かった。
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