製作当時はサラリーマンのリアルな悲哀を喜劇に仕立てたドラマだったはずが、70年たった今では戦後のサラリーマンの暮らしがどういうものだったかを知ることが出来る貴重な資料に。
そして自分を凡人と理解しつつも社員たちのために奔走する三等重役の河村黎吉の、コメディアン特有のわざとらしさがないあくまで等身大の人間として演技する姿は見れば見るほど味わいが増す。コメディやホームドラマのみならず島津保次郎や小津安二郎、黒澤明といった名匠とも仕事をしてきた名優の一つの到達点とも言え、早すぎる死(この映画が公開された年に亡くなる)が惜しまれる。
社長シリーズの時より若々しい森繁久彌(社長シリーズと違って切れ者なのが新鮮)&小林桂樹も見所。