まさわ

スタンドアップのまさわのレビュー・感想・評価

スタンドアップ(2005年製作の映画)
4.0
宮地尚子『傷を愛せるか 増補新版』(ちくま文庫)読んでたら、「弱さを抱えたままの強さ」でこの映画を取り上げていたから興味があってU-NEXTで見た。

エッセイでは「隙がある」「つけ込まれやすい」人物が弱さをさらけ出したまま生きていると周囲はその人に腹をたててしまうことがある、では「鎧」を何重にもまとって戦うことだけが有効なのか?弱さを克服しなければならないのか?弱いままで生きてはいけないのか?という問いかけをしている。

映画は二人の子供を抱えた主人公が、DV夫から逃れて実家に戻り、鉱山で働きはじめるものの、男性同僚たちから壮絶なセクシャルハラスメントを受けつづけ、経営陣に抗議すると解雇を言い渡されてしまう。訴訟をしようにも同じようにセクハラ被害を受けた女性同僚たちは報復が怖くて協力してくれない…孤立無援でも諦めたくないが…という話。(映画は35年前の集団訴訟をモデルにしている)

組合で主人公が演説をするのにひどいヤジが止まらず、声が詰まってうまく話せないシーンで、見るに見かねて男性が代わりに演説する。すると男の話はみんなちゃんと聞くわけ。さらに「お前たちは自分の娘が同じ扱いをされたらどうするんだ!?」ってよくある言葉も出てくるの。こういうの、ほんと、うんざりする!!!ってね、なります。なぜ女の言葉を聞けないのか、なぜ娘や妻に置きかえないと考えられないのか、他人を尊重するのはそんなにむずかしいことなのかと。

そして、映画が主人公を弱いままで描くことにハラハラし、どこかで主人公の立派なスピーチシーンで感動したいと望んでいた自分にも気がついて、ハッとしました。そうだ、なぜ彼女に「強くなってほしい」と望んでしまうのか、弱さを受け入れないのかと。主人公の境遇やセクハラシーンが精神的にきつすぎて、とても他人にはすすめられないけど、そういう自分に気がつけたのは貴重で、よい映画でした。
まさわ

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