私が理想とする儚さというものが、この映画には残されていた。
普段私は「エモい」という言葉を、平たい表現や軽薄な言葉としてあまり良く捉えていないが、本作などの平成カルチャーが体現化された場においては、この「エモい」という言葉がなによりもの正解であり適切な表現であると思っている。
平成独自の「未来想像」や「近未来感」が本作からも垣間見られ、SF的恋愛作品という世界観と完全なる調和を生み出している。
本作は恋愛やSFという設定の他に、ミュージカル映画的要素も加わっている。
広末さん演じるポウセが一人で歌い出すシーンもあれば、圓島努さん演じるチュンセと共にまるで舞台で演技しているかのように踊りながら歌い出すシーンもあり、ミュージカル映画的側面から見てもなかなか本格的だと思う。
そして映画制作を題材とした映画なだけあって、やはり映像美も本作の魅力の一つ。
構図やカメラワークが特に秀逸で、映画内でカメラを覗くシーンでは平成を象徴とするような手持ちカメラ独特の画質の荒さが映される。
まさにタイトルにもある通りの「ノスタルジア」だ。
作中では頻繁にフィルムの色が変化することも特徴的であり、暖かみを感じる焦茶色、冷たさや世紀末感を感じる薄青など、物語終盤では緑色にも染色される。
この変化にはなにか意味があるのか、それとも単なる制作者の遊びなのか。
私個人としては登場人物の心理描写を抽象的に表現するための一つの手段だと捉えている。
映像表現やミュージカル的表現など含め、本作のストーリーはとても温かく、希望に満ち溢れている。