CANACO

スリーパーズのCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

スリーパーズ(1996年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

1996年公開。『レインマン』を撮ったバリー・レヴィンソン監督・脚本作品。ロレンツォ・カルカッテラ氏の同名小説が原作で、Sleeperは「少年院あがり」を意味する。

21歳で本作を見たとき、ケビン・ベーコン演じるゲス看守長のインパクトが強すぎて筋を忘れていた。『インビジブル』の透明人間と本作の看守長は、映画クズ野郎ランキングで上位に入るけど、演じているのは両方ケビン・ベーコン。ある意味すごい。

〈あらすじ〉
スラム街でやんちゃを繰り返していた少年4人。ある日、ホットドッグ屋台を盗んで逃げている最中、地下鉄の階段からうっかりそれを落としてしまったことにより、1名が巻き込まれて死んでしまう。

4人は少年院に1年半収容されるが、そのときの看守長および看守計4名の“おもちゃ”となり、立場を利用した肉体的および性的虐待を受け続けることになる。精神的に激しいダメージを受けた4人は憎しみを抱えながらもそれを封印をしてシャバに戻る。マイケルは検事、シェイクスは見習い記者と堅気の仕事についた一方で、ジョンとトミーは犯罪を繰り返すチンピラになった。

ある日、ジョンとトミーはダイニングバーで、老いた看守長・ノークスと偶然遭遇。2人は復讐心から反射的に店内で射殺する。堂々と店から出ていった2人は逮捕・起訴されるが、それを知ったマイケルはシェイクスに連絡をとり「作戦を実行する」と告げる。そこから始まる罪と罰について描いた復讐の法廷劇。

.....
主要な登場人物が多いこともあり、さまざまな角度から語ることができる本作。事実か否かについては、脚色されている部分が多いのは間違いなさそう。マイケルと、ジョンとトミー2人、神父の関係性について法廷で問題にならないのも違和感ある。「7年で少年院の記録は抹殺される」という説明だけでは補えないと思う。

祈り、救い、更生、偽証と正義、と扱っているテーマが深いので、張りぼての設定が気になってしまう。検事、記者、チンピラと漫画のような進路の分かれ方するかな? さらに5人目のメンバー(ヒロイン)がいて、鞘当てする話も出てくるのだが、そんなことある? 格好良すぎる老練のマフィアボス(ヴィットリオ・ガスマン)、4人のために偽証する神父(ロバート・デ・ニーロ)、メンバーをハラハラさせるアル中の弁護士(ダスティン・ホフマン)も漫画っぽい。それぞれのキャラクター自体はとてもよかった。役者陣は素晴らしい演技を見せただけにいろいろ勿体ない。

フットボールが得意だったがゆえに、看守チームと対戦して勝ってしまい、リンチにあって殺されてしまうリゾという男の子も出てくるのだが、その兄は麻薬王だったっていう設定も漫画じゃないかなと思う。

漫画設定が悪いわけではなく、「事実」だというからモヤモヤしちゃう。

本編終了後、NY州青少年矯正機関が「このような施設(少年院)は存在しない」と発表していること、マンハッタン地方検察局が「このような事件および裁判は存在しなかった」と断言していること、原作者のカルカッテラが、「氏名、年代、場所を変えた実話である」と主張していることがテロップで出る。

英語版wikiにも、マンハッタン地方検察局は、原作本に記載されているような事件の記録はないと述べていること、カルカッテラが通っていたキリスト教会と学校が怒りの声明を出していることが書かれている。

実際の法廷で通るとは思えないが、神父が偽証した気持ちには共感できる。
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